2023.10.17
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「建替え決議がされた場合の賃借権の消滅に係る区分所有法制の改正について」:ファイナンスプラクティスグループ

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建替え決議がされた場合の賃借権の消滅に係る区分所有法制の改正について

法制審議会の区分所有法制部会は、令和5年6月8日、「区分所有法制の改正に関する中間試案」(以下「本試案」といいます。)を取りまとめました。本試案は、区分所有建物の管理の円滑化及び再生の円滑化を図るとともに、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の再生の円滑化を図る等の観点から、区分所有法制の見直しにつき様々な事項に関して取りまとめられています。本稿では、本試案のうち、区分所有建物の再生の円滑化を図る方策としての、建替え決議がされた場合の賃借権の消滅に関する部分につき概要を紹介します。なお、本稿は、基本的には、本稿末尾の参照URLのリンク先に公表されている本試案等の内容を基礎にしております。本試案は、法制審議会等において現在議論中のものであり、今後の動向等次第で本稿とは異なる制度になる可能性がありますので念のためご留意ください。

 

1. 改正検討の背景

 

本試案では、建替えを円滑化する観点から、区分所有建物 について建替え決議がされた場合に専有部分の賃借権を消滅させる方策について検討がなされています。 これは、現行法上、専有部分の賃借権の存在が区分所有建物の円滑な建替えの支障となり得ることを前提としています。その具体的な内容は、以下のとおりです。 区分所有建物について建替え決議が成立すると、区分所有法第64条に基づき、建替え決議に賛成する区分所有者、決議に賛成しなかったものの決議の内容により建替えに参加することを回答した区分所有者及び買受指定者間では建替えに関するみなし合意が成立することになります。かかる区分所有者等は、①建て替える建物がマンションである場合でマンション建替円滑化法の適用を受けないとき及び建て替える建物がマンションでない場合には任意事業として、②建て替える建物がマンションである場合でマンション建替円滑化法の適用を受けるときには法定事業として建物の建替事業を施行します。いずれの場合においても、区分所有者は、デベロッパー等との合意又は権利変換計画にしたがって取壊しに備えて専有部分を明け渡す義務を負うものと解されます。専有部分に賃借人がいる場合、賃借人は、①建替事業が任意事業であるときには建替えによって賃借権を喪失するか否かが不明確であり、②建替事業が法定事業であるときには権利変換計画に定める権利変換期日に賃借権を喪失し(マンション建替円滑化法第71条第1項)、建替後の建物(マンション)の専有部分につき新たな賃借権を取得します(同法第71条第3項、第60条第4項)。賃貸人たる区分所有者は、現存する建物の明渡義務を履行するため、明渡期日までに賃借人に明渡しを求めることになりますが、賃借人は、このような請求に応じない場合があります。そのため、賃貸人としては、みずからの明渡義務を円滑に履行するうえで、その明渡期日に先立って賃貸借関係を終了させることが望ましいといえます。

 

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業務分野
金融規制法(レギュラトリー)
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