2026.11.04
ニューズレター

「通商摩擦下の国際売買契約 ──米中双方の規制が契約条項に及ぼす作用」:Emerging Industriesチーム

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通商摩擦下の国際売買契約
──米中双方の規制が契約条項に及ぼす作用
関税分担・制裁遵守・還付精算・不可抗力の四つの条項を手掛かりに

1.     はじめに

先般公表した「米国Affiliates Ruleと中国の輸出管理措置の停止期間終了に向けた実務対応」【前編】(EID_001)では、米国のAffiliates Ruleと中国の輸出管理措置に係る二つの停止措置が2026年11月に期限を迎えることを踏まえ、現に適用されている措置と停止中の措置を区分したうえで、米国側では取引先の所有構造に関する情報が、中国側では製品・技術の来歴と最終需要者・最終用途に関する情報が、それぞれ準備の重心となることを述べました。同【後編】(EID_003)では、これらの情報基盤を質問票、契約、取引審査および社内の意思決定にどのように落とし込むかを検討しました。

本稿では、そのうち契約面を取り上げます。後編では、締結時点の表明保証にとどまらず継続的な通知義務と履行保留の権利を確保することの重要性を指摘しましたが、契約条項そのものが米中双方の規制からどのような制約を受けるかについては立ち入りませんでした。以下では、関税分担・価格調整条項、制裁遵守条項、還付・精算条項、不可抗力・履行停止条項の四つを取り上げ、それぞれについて、米国側の規制と中国側の規制が条項の効力や設計にどのように作用するかを検討します。

規制の内容そのものは既刊に譲り、本稿では重複を避けます。また、関税や不可抗力に関する一般論は、すでに多くの解説が公表されていますので、本稿はそれらと重なる部分を省き、米中双方の規制が同一の条項に同時に作用するという構造に焦点を当てます。

11月に順次到来する各措置の停止期限および再適用日との関係について、一言しておきます。期限は措置ごとに異なり、米国のAffiliates Ruleは2026年11月9日までの停止(同月10日から復活)、中国の商務部・海関総署公告2025年第70号は同月10日まで、商務部公告2025年第72号は同月27日までの停止です。2026年9月23日から25日までの中国国家主席の米国訪問に際し、9月24日に米中首脳会談が行われました。これに先立って9月20日にニューヨークで経貿協議が行われ、さらに9月23日にはワシントンで両国の経貿協議責任者が再度会談しました。その後、米国財務長官は、同年11月に期限を迎える米中間の停止措置を2か月延長し、2027年1月10日までとする旨を表明したと報じられています。中国商務部も9月28日、第8回経貿協議の成果に関する解説において、双方がクアラルンプール経貿協議の共同取決めを2027年1月10日まで延期することを前提に、引き続き協議を行うことに同意した旨を明らかにしました。もっとも、こうした延長に関する内容は、米国大統領府が9月25日に公表した首脳会談の成果に関するファクトシートには記載されていません。

さらに重要なのは、Affiliates Ruleの停止が連邦官報に掲載された規則によって行われており、同規則が停止期間を2026年11月9日までと定め、同月10日をもってAffiliates Ruleに基づく許可要件等が輸出管理規則に復活する旨を明記している点です。本稿の執筆時点において、この期限を変更するBISの措置も、中国側の公告70号の停止期間を変更する公告も確認できていません。米中双方の当局が同じ日付に言及していながら、規則上の期日はなお動いていないことになります。前編で述べたとおり、政治的な合意と各規則の効力の発生・停止とは区別して見る必要があり、今回の延長に向けた動きは、その区別が実務上重要であることを示す一例といえます。取引先スクリーニングの実務においては、BISおよび商務部の新たな措置を確認するまで、11月10日を前提として準備を進めることが適当と考えられます。いずれにせよ、本稿で述べる条項設計の必要性は、延長、修正、適用の開始または再開のいずれが生じた場合にも変わりません。関税の法的根拠が短期間で入れ替わり、制裁の対象と範囲が変動し続ける状況そのものが、条項の見直しを必要としているためです。

 

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【目次】

1.    はじめに
2.    条項から見る通商規制──本稿の視座
3.    関税分担・価格調整条項

4.    制裁遵守条項

5.    関税の事後変動と還付
6.    不可抗力・履行停止条項
7.    条項設計の要点

8.    おわりに

 

【関連リンク】

安全保障貿易管理

関税関連法

 

 

* 本稿は2026年11月4日現在の情報に基づいています。米中双方の措置については、停止期間の延長、内容の修正その他の変更が行われる可能性がありますので、実際の取引判断にあたっては最新の法令および当局の公表資料をご確認ください。
**本稿は、対米輸出および中国に関係するサプライチェーンを有する日本企業の法務部門・輸出管理部門を主な読者として想定しています。規制の内容そのものは既刊(前編・後編)に譲り、本稿では契約条項の設計に絞って検討します。なお、本稿は条項の設計上の要点を示すものであり、具体的な契約については個別にご相談ください。

発行年月
2026.11
業務分野
関税関連法 安全保障貿易管理
掲載先

ニューズレター

著者等
シニアパートナー

落合 孝文 Takafumi Ochiai

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パートナー

大門 由佳 Yuka Daimon

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アソシエイト

徐 楊 Yang Xu

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