[Vietnam Legal Update]「ベトナム領事認証に代わるアポスティーユ証明の適用」
ベトナム領事認証に代わるアポスティーユ証明の適用
2026.10.26
1. はじめに
2026年7月23日、ベトナム政府は、1961年10月5日付ハーグ条約(正式名称は「外交公文書の認証を不要とする条約」、以下「ハーグ条約」といいます。)実施のガイドラインとなる政令(第293/2026/ND-CP)を発行し、同政令は、2026年9月11日から施行されました。これにより、ベトナム及びベトナムとのハーグ条約の適用関係のある加盟国125か国(日本も含まれます)の間では、公文書に対する従来の領事認証(ある国で発行された公文書の真正性を、その国に所在する提出先国の大使館・領事館が証明する手続)は不要となり、公文書が真正であることの証明は、その国の外務省が証明する付箋を当該公文書に貼付する手続であるアポスティーユのみで十分となりました。これにより国際的な公文書の確認プロセスが大幅に簡素化されました。
本稿では、ベトナムと日本の間で適用されるアポスティーユに関する主要な内容と、ベトナムで投資、事業を行う日本企業、日本人の労働者、居住者への実務的影響を分析します。
2. 主要な変更点
2.1. 適用範囲
アポスティーユは、領事認証に代わるものであり、それ以前の公証を得る義務を不要とするものではありません。外国語で書かれた書類につき公証された翻訳文の提出が必要であることも従前の手続と同じです。
2.2. ベトナムで使用する日本の書類のアポスティーユ申請手続
駐日ベトナム大使館の通知によると、日本で発行された公文書をベトナムで使用する場合、日本の外務省(本省又は大阪分室)にアポスティーユを申請することになり[1]、従来のように駐日ベトナム大使館に領事認証書類を提出する必要はなくなりました。アポスティーユが付与されると、その書類のベトナムでの使用が法的に有効と認められます。
2.3. 日本で使用するベトナムの書類のアポスティーユ申請手続
日本で使用するベトナムの公文書について、駐日ベトナム大使館はアポスティーユを発行しません。全てのベトナム公文書についてベトナム国内でアポスティーユを申請する必要があります。具体的には、ハノイ市の外務省(領事部)又はホーチミン市の外務局に申請することになります。
提出書類は、国家公共サービスポータル又は外務省行政手続情報システムから入手できる、外務省通達12/2026/TT-BNGで規定されたアポスティーユ申請書(書式APO/TK)とそのコピー、及びアポスティーユ申請に関する資料、書類(必要な場合には翻訳とその公証が求められます)です。手数料は受領書のQRコードに基づき銀行振込で支払います。発給までの期間は、申請書に記載される公文書が1件から4件の場合は1営業日、5件から9件の場合は2営業日、10件以上の場合は4営業日です。
2.4. ハーグ条約発効後の大使館の役割
ベトナム大使館は、ハーグ条約の適用範囲内の公文書の領事認証を行っていません。大使館は条約の適用範囲外の文書(ハーグ条約第1条に基づく外交官や領事官による書類、商業・税関に直接関連する行政書類)だけに対して領事認証を継続的に行うことになります。
3. おわりに
ベトナムにおける投資活動や事業で使用される日本の書類は、公証、外務省による公印確認、駐日ベトナム大使館での領事認証など日本で多くの手続を経る必要がありました。今後は、日本の外務省発行のアポスティーユにより駐日ベトナム大使館における領事認証が省かれるため、重要な書類作成の時間とコストが大幅に短縮されます。もっとも、前述のとおり領事認証が必要となる場合が残っているため、使用予定の各書類がハーグ条約の適用範囲内かどうかを慎重に検討すべきです。
[1] 公文書の場合は、必ず外務省の本省又は大阪分室で手続が必要です。私文書の場合は、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、京都、兵庫、福岡に所在する公証役場で公証をすれば、法務局の証明及びアポスティーユ取得まで済ませることができる「ワンストップサービス」が利用でき、この場合は外務省の本省又は大阪分室での手続が不要になります。埼玉、茨城、栃木、群馬、千葉、長野、新潟に所在する公証役場で公証をする場合は、法務局の証明を済ませることはできますが、アポスティーユ取得に関して外務省の本省又は大阪分室での手続が必要になります。詳しくは外務省のウェブサイト(申請手続きガイド 2 申請の流れ|外務省)をご参照ください。