[Vietnam Legal Update]「ベトナムの就業規則に関するFAQs」
ベトナムの就業規則に関するFAQs
2026.8.3
ベトナムにおける就業規則は、日本と同様に、実効的な労務管理のために不可欠の法的ツールです。適切に作成・登録された就業規則は、雇用主が職場規律を維持し、必要な懲戒処分を可能にし、行政的な法的リスクを軽減し、労働紛争において自社を適切に保護することを可能にします。
労働法令の改正、事業の拡大、従業員の増加等に伴って、就業規則を定期的にアップデートすることは極めて重要です。そこで、今回のLegal Updateでは、改めてベトナムにおける就業規則の重要性を再認識するため、基本的な事項も含めて、ベトナム就業規則のFAQs(よくある質問)を取り上げます。
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1 |
就業規則とは何か、また、なぜ重要なのか。 |
就業規則とは、雇用主が主に次の事項を定めるために制定する社内規則です。 • 労働基準:労働時間、休憩時間、職場の安全 • 行動規範及び懲戒:禁止行為及びこれに対応する懲戒処分 • 業務上の権利義務:従業員の責務及び雇用主の管理権限 実務上、就業規則は職場を規律するための法的根拠として機能します。有効な就業規則がなければ、雇用主が懲戒処分(解雇を含みます。)を行う権限は著しく制限されます。 労働仲裁や裁判手続を含む紛争解決の場面において、就業規則は、雇用主による措置の適法性を判断する際に最初に精査される文書の一つとなることが多いといえます。 |
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2 |
就業規則の作成はすべての雇用主にとって義務なのか。 |
雇用主の規模によって異なります。 義務が課される場合 従業員数10名以上の雇用主は、書面による就業規則を作成し、労働当局に登録しなければなりません。 小規模事業者(従業員数10名未満)の場合 就業規則の作成は義務付けられていません。もっとも、雇用主は、実務上、規律を維持するため、雇用契約や簡易な社内方針等を通じて社内の規則を定めておくべきといえます。こうした規則が文書化されていなければ、懲戒処分を行うことは事実上困難となります。 未登録時だとどうなるか 就業規則の作成が義務付けられているにもかかわらず登録を怠った場合、当該就業規則は法的に無効となります。従業員が署名していた場合や、長年にわたり社内に掲示されていた場合であっても、この結論に変わりはありません。 |
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3 |
就業規則にはどのような事項を記載しなければならないか。 |
就業規則には次の9つの事項を漏れなく定めなければなりません。 1. 労働時間及び休憩時間:シフト、休憩、祝日、年次有給休暇など 2. 職場の規律:行動規範、勤怠及び職務上の振る舞いなど 3. 労働安全衛生:安全手順及び衛生基準など 4. セクシャルハラスメントの防止:定義及び正式な苦情処理手続(必須事項)など 5. 資産及び秘密の保護:営業秘密、知的財産及び会社資産の管理など 6. 一時的配置転換:従業員を雇用契約上の職務以外の業務に異動させる場合の取扱い 7. 懲戒事由及び懲戒処分:禁止行為の具体的なリスト、並びに譴責、昇給の延期、降格又は解雇の4形態に限定される懲戒処分 8. 物的責任:資産の損傷又は紛失に対する補償手続など 9. 懲戒処分の権限を有する者:懲戒処分を行う権限を有する者の指定 これら9つの必須事項のいずれかが欠けており、労働当局が当該就業規則の登録を受理しない場合、又は就業規則が登録されていない場合、当該就業規則は法的に無効となり、労働紛争の際に会社が重大な訴訟リスクにさらされることになります。 |
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4 |
就業規則の登録に関する標準的な手続はどのようなものか。 |
就業規則の登録手続には、以下のステップが含まれます。 ステップ1-ドラフト 就業規則は、ベトナム法令に準拠し、かつ、雇用主の実際の業務実態に即した内容として作成する必要があります。 ステップ2-協議 雇用主は、従業員代表組織(存在する場合)と協議を行わなければなりません。 法的意義:この手続を履践しなかった場合、就業規則が手続的な理由により争われるおそれがあります。 ステップ3-発行 就業規則は、提出に先立ち、雇用主により正式に発行されなければなりません。 ステップ4-提出 登録書類一式を労働当局に10日以内に提出する必要があります。 ステップ5-当局による審査 労働当局は、7営業日以内に申請書類を審査し、次のいずれかの対応を行います。 • 就業規則を受理・登録する • 修正又は追加資料の提出を求める |
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公共サービスポータルを通じて就業規則を提出する手順はどのようなものか。 |
ステップ1:公共サービスポータル(https://dichvucong.gov.vn/)にアクセスし、「登録」又は「ログイン」を選択します。 ステップ2:行政手続の種類として「企業の労働規則の登録」(手続コード:2.001955)を選択します。 ステップ3:申請先機関を選択し、「申請書を提出する」を選択します。 ステップ4:提出先機関を再度確認した上で、「オンラインで提出する」ボタンを選択します。 ステップ5:ログインします。 ステップ6:申請先機関を選択し、「同意する」及び「次へ」を選択します。 ステップ7:必要事項を入力の上、就業規則を添付します。その後、「次へ」を選択して申請を提出します。 |
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6 |
外国の親会社は、ベトナムの子会社に対して自社のグローバル・ポリシーを直接適用することができるか。 |
必ずしも適用できるとは限りません。 グループ全体のグローバル・ポリシーは参考となり得ますが、ベトナムで適用される就業規則は、ベトナム労働法上の要件に適合したものでなければなりません。 実務上、グローバル・ポリシーに一般的に見られる特定の条項は、ベトナムの法制度に合わせて適切にローカライズされない限り、ベトナム法と整合しない場合や、ベトナム法の下での執行が困難となる場合があります。 |
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リスク管理の観点から、就業規則に関してどのように取り組むべきか。 |
就業規則を画一的な雛形文書として扱うのではなく、雇用主は次の点に取り組むべきです。 (i) 就業規則のカスタマイズ 実際の事業運営の実態、業界特有のリスク及び従業員構成を反映させること。 (ii) 執行可能性の確保 規則は、次の要件を満たす必要があります。 • 内容が明確であること • 判断基準が明確であること(測定可能であること) • 一貫して適用されること (iii) 社内方針との整合性の確保 就業規則は、雇用契約、人事方針及び社内慣行と整合したものでなければなりません。 (iv) 実施状況の記録 雇用主は次の対応を行うべきです。 • 従業員に就業規則の内容を周知すること • 書面による受領確認を取得すること • 検査や紛争に備えて記録を保管すること |
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ベトナム国内に複数の子会社を有する外国の親会社は、当該複数の法人に対して同一の就業規則を使用することができるか。 |
一定の範囲では、同一の社内的な枠組みを共通の参考として用いることは可能です。もっとも、ベトナム国内の各法人については、それぞれの実情に即して個別に作成された就業規則を整備することが望ましく、その際には次の事項を反映させるべきです。 • 組織構造 • 事業拠点 • 事業分野及び業務内容 • 当該法人の法的性質 実務上、労働当局は、就業規則の登録書類が当該規制の適用対象となる法人の実態を正確に反映していることを求めるのが一般的です。したがって、中核となる規定が同一グループ内の各法人間で実質的に類似する場合であっても、各社の実情及び登録情報との整合性を確保するため、就業規則は法人ごとに調整する必要があります。 |
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雇用主は、就業規則違反に対して従業員に金銭的な罰則を科すことができるか。 |
できません。ベトナム労働法上、就業規則及び関連法令に定められた懲戒処分に代えて、雇用主が金銭的な罰金や賃金の減額を行うことは認められていません。 労働法が認める適法な懲戒処分は、次のとおりです。 • 譴責 • 最長6か月間の昇給の延期 • 降格 • 解雇 |
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職場におけるセクシャルハラスメントへの対応は、就業規則に定める必要があるか。 |
定める必要があります。ベトナム労働法上、職場におけるセクシャルハラスメントの防止及び対応に関する規定は、就業規則の必須記載事項とされています。 実務上、雇用主は次の事項を明確に定める必要があります。 • 禁止される行為 • 苦情の申立て及び処理の手続 • 懲戒処分 • 調査手続における守秘義務 明確な規定を設けることで、雇用主は、安全な職場環境を維持しつつ、法的リスク及びレピュテーションリスクを軽減することができます。 |
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海外赴任者のために、就業規則を外国語に翻訳する必要はあるか。 |
必ずしも必要ではありません。ベトナム法令上、就業規則を外国語で作成することは明示的には義務付けられていません。もっとも、外国人従業員を雇用する雇用主にとっては、適切な理解と遵守を確保する観点から、二か国語版を用意することが望ましいといえます。 ただし、紛争が生じた場合には、一般にベトナム語版が優先されますが、言語間の不一致は解釈上のリスクを生じさせるおそれがあります。 |
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就業規則登録書類の修正・補足が求められる典型的な理由はどのようなものか。 |
典型的な理由としては、次のようなものが挙げられます。 • 就業規則の規定がベトナム労働法と抵触していること • 職場におけるセクシャルハラスメントに関する必須規定の記載漏れ • 懲戒処分として金銭的な罰金や賃金控除を科す規定を設けていること • 従業員代表組織(存在する場合)との協議を証する記録が欠如していること • 登録書類における署名や添付書類に不整合があること これらは、特にベトナムで初めて事業を設立又は運営する外資系企業に共通してみられる問題です。提出前に就業規則及び添付書類について慎重に法的審査を行うことで、労働当局から修正や補足を求められるリスクを最小限に抑えることができます。 |
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就業規則はいつ効力を生じるか。 |
就業規則は、労働当局が就業規則に関する完全な登録書類を受領した日から15日を経過した時点で効力を生じます。従業員数10名未満の雇用主が書面による就業規則を作成する場合には、その効力発生日は就業規則自体の中で雇用主が定めることになります。 |
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就業規則を遡及適用することはできるか。 |
できません。就業規則は、その効力発生日より前に生じた行為に対して遡及的に適用することはできません。 実務上も、懲戒処分は、就業規則の効力発生日以後に生じた違反行為に対してのみ、かつ、従業員が関連する規則や義務について適切な通知を受けた後においてのみ、科される必要があります。遡及適用に基づく懲戒処分は、無効又は執行不能と判断されるおそれがあります。 |
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就業規則のどの規定が最も紛争の対象となりやすいか。 |
実務上、次の事項に関して紛争が生じることがよくあります。 • 解雇事由 • 懲戒手続 • 内容が明確に定義されていない違反行為又は不正行為 • 労働時間の取決め • 守秘義務 したがって、これらの規定は、潜在的な紛争を最小限に抑え、実務上効果的に機能するよう、明確かつ実用的な文言を用いて慎重に作成すべきです。 |
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就業規則は、雇用契約やグループの社内規程と整合させるべきか。 |
整合させるべきです。実務上、多くの外資系企業は、次のような複数の社内文書を並行して運用しています。 • 雇用契約 • 就業規則 • 社内規程 • 行動規範 • グローバルコンプライアンスポリシー これらの文書は、相互に整合性及び一貫性を保つ必要があります。これらの文書間に齟齬や矛盾する規定がある場合、雇用主は、実施、執行及び労働紛争への対応において困難に直面するおそれがあります。 もっとも、いずれの社内方針及び文書も、適用されるベトナム労働法令への準拠を確保しなければならない点には留意が必要です。特に、社内規則やグローバル方針の内容がベトナムの強行法規の要件と異なる場合、雇用主は、ベトナムにおいて当該規定を適用するに当たり、ベトナム法の遵守を優先しなければなりません。 |
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雇用主は、就業規則(及び雇用契約書)がない場合でも従業員を解雇することができるか。 |
できます。ただし、従業員数が10名未満であり、かつ、当該違反行為が雇用契約書に具体的に定められているか、又は労働法令上認められている場合に限られます。 |
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就業規則を登録しなかった企業に対する罰金の額はいくらか。 |
就業規則の登録を怠った企業には、1,000万VNDから2,000万VNDの罰金が科される可能性があります。 |
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すべての従業員への通知を怠った場合、又は就業規則の主要な内容を掲示しなかった場合の罰金の額はいくらか。 |
すべての従業員に就業規則を通知しなかった企業、又は職場の必要な場所に就業規則の主要な内容を掲示しなかった企業には、200万VNDから600万VNDの罰金が科される場合があります。 |
免責事項
本FAQは、一般的な情報提供のみを目的とするものであり、法的助言を構成するものではありません。具体的な法的助言が必要な場合には、個別の事案に基づき、専門家にご相談ください。