[Vietnam Legal Update]「外国直接投資:許認可手続における新たなアプローチ」
外国直接投資:許認可手続における新たなアプローチ
2026.5.13
1. はじめに
2026年3月31日、ベトナム政府は、2025年投資法を施行するための指針として、政令No.96/2026/NĐ-CP(「政令第96号」)を公布しました。 本政令により、外国投資家は、投資プロジェクトに関する投資登録証明書(IRC)を申請する前に、経済組織に関する企業登録証明書(ERC)を取得することが可能となりました。これは、従前の2020年投資法に基づく手続の流れを変更するものであり、長年指摘されてきた実務上のボトルネックの解消につながるものとして注目されています。
2. 政令第96号に基づく新たな手続
従来、2020年投資法及び政令No.31/2021/NĐ-CPの下では、外国投資家は、まず投資プロジェクトの許認可手続を終えた上で、経済組織を設立する必要がありました。
しかし、2025年投資法及び政令第96号により、外国投資家は、資本所有比率、投資形態及び事業分野(市場参入条件)に関する要件を満たすことを前提として、IRCの取得前にERCを取得することが認められるようになりました。もっとも、ERCの申請に際しては、市場参入条件を遵守する旨の誓約を含める必要があります。そのため、市場参入条件の審査は、事業登録機関又はこれに相当する当局が担当することになります。
また、外国投資家は、ERCの設立日から12か月以内に、登録された事業内容に適合する投資プロジェクトについてIRC申請を完了する義務を負います。これを怠った場合には、ERCの取消し及び強制力による解散につながる可能性があります。
3. 市場参入期間の大幅な短縮
IRC申請前にERC取得を認める今回の改正は、ベトナム投資法制における大きな進展といえます。従来、IRC申請に際しては、投資プロジェクト提案書、財務能力を証明する書類、土地使用権関連資料、説明資料等、一式の書類準備に約3〜6か月を要することが一般的でした。これに対し、新制度の下では、外国投資家は2〜4週間程度でベトナム法人を設立できる可能性があります。これにより、外国投資家と国内企業との間で、投資プロジェクトの準備段階における競争条件の平準化が期待されるほか、外国投資家が事業機会をより迅速かつ効果的に捉えることが可能となります。また、2020年投資法の下では、外国投資家はIRC取得前には法人格を有していなかったため、オフィス賃貸や従業員雇用等の初期活動を、親会社又はパートナー企業を通じて行わざるを得ませんでしたが、かかる問題も解消されます。
4. 残された課題
もっとも、政令第96号には依然として一定の課題が残されています。
まず、政令第96号は、一般的な手続上の方向性を示すにとどまり、実務運用に必要なテンプレートや実施指針は未整備となっています。また、通達No.68/2025/TT-BTCにも、政令第96号に基づく新たな手続は現時点で反映されていません。そのため、外国投資家としては、今後の追加ガイダンスを待つか、管轄当局の運用に従って対応せざるを得ない状況にあります。
加えて、投資プロジェクトの承認前に法人設立を認める制度には、一定のリスクが伴います。例えば、政令第96号には、投資家が法定期間内に投資プロジェクトを立ち上げられなかった場合におけるERCの取消しに関する明確な規定が存在しません。これにより、特に不動産分野において、具体的な投資プロジェクトを伴わずに違法な目的で法人が設立されるおそれがあります。
さらに、2025年投資法及び政令第96号のいずれにおいても、会社設立後にIRC申請が却下された場合の法的な帰結については明確に規定されていません。
5. 新制度の活用に向けて
新制度のメリットを最大限に活用するためには、外国投資家による事前準備が重要となります。具体的には、法令遵守するために市場参入条件を十分に精査し、ERC及びIRCの申請準備を並行して進めることが望ましいでしょう。これにより、許認可取得までの期間を最適化できる可能性があります。
執筆日:2026年4月14日