2023.01.13
イベント/セミナー

[開催レポート] 「プラットフォームへの規制のあり方を考える学生参加型セミナー」を開催しました。

 

プロトタイプ政策研究所が主催し、京都大学大学院法学研究科法政策共同研究センター、東京大学大学院法学政治学研究科先端ビジネスロー国際卓越大学院プログラム、九州大学文系4学部副専攻プログラムが共催となる、「プラットフォームへの規制のあり方を考える学生参加型セミナー」を、2022年12月11日に開催いたしました。

 

本セミナーは、デジタルサービスが社会に浸透する中で、プラットフォームと利用者との関係が競争法、情報法、消費者等の保護法といった様々な視点で整理が求められるようになったことを踏まえ、旧来の法制度を理解するだけでは十分でなく、新たな視点への理解を進めることを目的として開催されました。京都大学法科大学院棟・第一演習室でのオンサイト及びWEB会議ツールによる同時配信を組み合わせたオンラインのハイブリッド開催とさせていただきましたが、当日は約25名が現地にて、約40名がZoomにてご参加されました。

 

本セミナーでは、3名の講師による以下の3つの講義が行われました。

 

 

 

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講義1

プラットフォームによるアルゴリズム(変更)が独占禁止法違反(優越的地位の濫用)として違法と判断された食べログ判決(東京地判令和4年6月16日【TKC法律情報データベース25593696)を題材に取り上げ、プラットフォームのアルゴリズムがどのような場合に違法とされるかが、具体的な事例も念頭にして論じられました。講師は、アルゴリズムに対する法的統制の問題について造詣が深く、食べログ判決事件でも原告代理人の一人を務められた松尾剛行氏(桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー弁護士)でした。松尾氏は様々な法令との関係でのアルゴリズムの規制を整理しつつ、同判決で判断が示された独占禁止法に関する論点も説明されました。

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講義2

松尾氏の講義での具体論も踏まえて、プラットフォーム規制のあり方一般について、情報法制、政策に造詣が深い成原慧氏(九州大学大学院法学研究院准教授)に講義いただきました。ここでは、プラットフォーム事業者は、アリゴリズムの設計・実装などを通じて、プラットフォームという場を設計し、個人の自由を拡げるとともに制約すること点が指摘されました。プラットフォーム事業を通じた、個人の自由の確保と公正で公平な社会の実現のために、プラットフォーム設計をどのように行うべきか、政府・個人がどのようにプラットフォーム事業者のガバナンスにかかわるべきかが論じられました。

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講義3

これら2つの講義の内容を踏まえ、プラットフォームの課題はプラットフォーム事業者だけで解決する課題なのか、一人一人がガバナンスの担い手となり、マルチステークホルダーによるルールや制度をアップデートするためのアジャイル・ガバナンスの必要性について、羽深宏樹氏(京都大学法学研究科特任教授)に講義いただきました。アジャイル・ガバナンスは、社会・技術の環境が大きく変化し、規制のゴールをも変化しうる情報化社会において、官民が協同してガバナンスを構築するためのであり、プラットフォームだけではなく、自動走行のアーキテクチャ設計やデジタル規制改革などにも利用しうるフレームであることが紹介されました。

会場の状況

各講義の後には質問時間を設け、現地及びウェブ参加の学生から多くの質問が行われました。学生からの鋭い質問に対して講師に加え、発表者以外の登壇者(稲谷龍彦氏(京都大学大学院法学研究科教授)、宍戸常寿氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、生貝直人氏(一橋大学大学院法学研究科教授)、東博暢氏(大阪公立大学特認教授))も参加して回答、コメントが行われました。登壇者が用意していたテーマについて、学生の柔軟な発想から様々な意見が出され、登壇者側からも様々な視点でコメントがされるなど白熱した議論が繰り広げられ、本セミナーは当初の予定より約1時間強延長されるほどの大盛況となりました。

 

登壇者・学生参加者共に新たな気付きがあり、これからの社会における取り組むべき課題について意義深い議論ができたセミナーとなりました。本セミナーでの議論、質疑の概要については、学生参加型セミナーではあったものの、鋭い視点からの問題提起も多く、様々な方にプラットフォームやガバナンスのあり方を考えていただくために有益なものと思いますので、改めて質疑状況の概要は報告をさせていただく予定です。

 

プロトタイプ政策研究所では、これからの社会の中心を担っていく若い世代向けに、今後も、社会で取り組むべき課題に触れていただくための学生向けイベントを開催していく予定です。今回ご参加いただけなかった方につきましても、次の機会にぜひまたご参加をいただければ幸いです。

※当日の会場の様子

プロトタイプ政策研究所セミナー写真②.jpg  プロトタイプ政策研究所セミナー写真①.jpg

 

 

【本セミナーの概要】

主催:渥美坂井法律事務所・外国法共同事業プロトタイプ政策研究所

日時:2022年12月11日(日)午後2時から午後6時

共催:京都大学大学院法学研究科法政策共同研究センター、東京大学大学院法学政治学研究科先端ビジネスロー国際卓越大学院プログラム、九州大学文系4学部副専攻プログラム

場所:京都大学(法科大学院棟2階・第一演習室)及びZoomによるオンラインのハイブリッド開催

登壇者:

稲谷 龍彦氏(京都大学大学院法学研究科教授)

宍戸 常寿氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

松尾 剛行氏(桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー弁護士、第一東京弁護士会)

成原 慧氏(九州大学大学院法学研究院准教授)

羽深 宏樹氏(京都大学法学研究科特任教授)

生貝 直人氏(一橋大学大学院法学研究科教授)

東 博暢氏(大阪公立大学特認教授)

講義内容:

①食べログ訴訟(松尾剛行氏)

②プラットフォーム規制のあり方(成原慧氏)

③ガバナンス・イノベーション(羽深宏樹氏)

趣旨:

デジタルサービスが社会に浸透する中で、プラットフォームと利用者との関係は、競争法、情報法、消費者等の保護法といった様々な視点で整理が求められつつあります。学生世代の参加者が今後社会で取り組むべき課題ですが、旧来の法制度を理解するだけでは十分でなく、新たな視点への理解を進める必要があります。本セミナーでは、食べログ訴訟の論点を理解しイメージの具体化を図りつつ、今後のプラットフォーム規制のあり方や、規制の枠組構築での利用が考えられるアジャイル・ガバナンスへの理解を深めていただきます。

 

 

 

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